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Mascotニューズレター 11月号

未知の修飾を探すために、非常に大きな質量許容範囲を設定した「Mass-tolerant : 質量許容」検索を行うことは良い方法なのでしょうか。「Error tolerant : 誤差許容」検索と比較してみました。ここでは得られた結果の中のある特殊なケースについてお話します。

Mascotを利用した研究論文を紹介しています。取り上げてほしい話題や研究論文がありましたらぜひご紹介ください。また、 Mascotニューズレターの内容に関して、お気づきの点やご質問などありましたらご連絡ください。.

今月の小技では、CIDとETDを交互に切り替えて収集した質量データに対する「Instrument」設定について説明しています。

Mascotニューズレターのバックナンバーは次のページからご覧いただけます。日本語版は「Japanese」リンクをクリックしてください。

 

November 2015

Mass-tolerant vs Error tolerant
Mascotを利用した研究論文の紹介
今月の小技
 

Mass-tolerant vs Error tolerant 検索ストラテジー

Gygiの研究グループ は、未知の修飾を持つペプチドを検出するために、500Daの質量許容範囲を与えて検索する「Mass-tolerant」検索を提案しています。その有用性を理解するために、Nature Biotechnologyに投稿された結果 とMascotの「Error tolerant」検索結果を比較してみました。

この実験で使われた「HEK 293」のデータセット(24個のRAWファイル)は Pride project PXD001468 からダウンロードし、Mascot DaemonとMascot Distillerを使ってそれらのRAWデータを処理した後、Mascot ServerのError tolerant検索を実行しました。1000以上の出現数を持つ修飾の多くは両者の結果に共通しており、予想範囲内でした。

Mass-tolerant検索で得られた出現数が多い修飾のうちの2つについてはError-tolerant検索結果からは即座に説明できませんでしたので、さらに検討する必要がありますが、そのうちのひとつは論文の中では、リボゾームタンパク質L14で見いだされたアラニンの重合体(polyalanine)の挿入として説明さています。なお、この修飾はUnimodデータベースには含まれていません。

Error tolerant検索では、最初に実行されたMascot検索で有意にマッチしたタンパク質に由来するペプチドを使いますので、それ以外のペプチドは検索対象になりません。このことを考えると、Mass-tolerant検索は細胞内で生成されるendogenousなペプチドの修飾を検出するような用途に威力を発揮するかも知れません。詳しい内容につきましてはブログをご覧ください。

Frequency distribution for observed delta masses

Mascotを利用した論文の紹介

Mascotニューズレターで取り上げてほしい話題や研究論文がありましたらぜひご紹介ください。また、Mascotニューズレターの内容に関してお気づきの点やご質問などありましたらご連絡ください。

 

Proteome-wide identification and quantification of S-glutathionylation targets in mouse liver

David J. McGarry, Wenzhang Chen, Probir Chakravarty, Douglas L. Lamont, C. Roland Wolf, Colin J. Henderson

Biochemical Journal Jun 19, 2015, 469, 25-32

Protein S-glutathionylation is an important post-translational modification that maintains redox homeostasis in response to stress, but its physiological role is not well understood. In this study, the authors developed a robust and optimized methodology for high-accuracy quantification and identification of S-glutathionylated targets in an animal model. They also established a number of S-glutathionylation pathways related to energy metabolism.

Grx1 is used to derivatize free thiol groups from S-glutathionylated proteins, which are then isolated by binding to thiopropyl Sepharose 6B beads. Then they identified and quantified these in vivo targets of S-glutathionylation using isobaric tandem mass tags (TMTs) with six-fold multiplexing. After TMT labelling and nLC?MS/MS analysis, a total of 743 proteins were identified from mouse liver lysates.

Thumbnail from featured publication

今月の小技

Mascot検索条件の「Instrument」リストには、質量分析計の種類・特性に対応したイオンシリーズの組み合わせがいくつか登録されており、登録リストからたとえば「ESI-TRAP」を選択すると、「b」および「y」イオンシリーズを仮定してMS/MSデータのマッチングを実行します。すべてのイオンシリーズを考慮する必要はありませんので、検索速度を速め、ペプチドの同定精度を高めることができます。

この「Instrument」条件はプロダクトイオンピークへのマッチング時に適用されますので、同じプリカーサイオンに対してCIDとETDを交互に実施して得られた質量データに対しても、CIDとETDに対応する「Instrument」条件を独立に適用すればいいのですが、現状では話はそう簡単ではありません。Mascot検索用ピークリストファイルはピーク抽出プログラムが作成しますが、そのスキャンがCIDあるいはETDのどちらのフラグメンテーションモード由来なのかという情報をピークリストファイルに挿入できないからです。

CID(またはHCD)とETDの両方のイオンシリーズ(b、c、y、z)を含む「CID+ETD」を使うことによりこの問題を回避することができます。もし「Instrument」リストに「CID+ETD」が登録されていないようでしたら、「Instrument」の新規設定・編集エディタを利用して新たに作成してください。

ピークの抽出条件は、同じプリカーサイオン質量と保持時間に由来するスキャンをひとつにまとめずに、独立に処理するように設定してください。Mascot Serverの「Instrument」リストから「CID+ETD」を選択してMascot検索を実行すると、CID由来またはETD由来のペプチドが同定されます。

Instrument settings configuration editor

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