英語のWeb版はここをクリックしてください   日本語のWeb版はここをクリックしてください

newsletter banner

2017年4月号

米国インディアナポリスのASMSカンファレンス会場(Room 137/138)にて、6/5(月)と6/6(火)に「 Mascotユーザ朝食ミーティング 2017」を開催しますのでご参加ください。

タンパク質の誤同定率(False Discovery Rate)を数値化するのは難しいという話題を取り上げます。

Mascotを利用した研究論文を紹介しています。取り上げてほしい話題や研究論文がありましたらぜひご紹介ください。また、 Mascotニューズレターの内容に関してお気づきの点やご質問などありましたらご連絡ください。

今月の小技は、Mascot 2.6のunimodデータベースに新規に元素を登録する方法についてご説明します。

Mascotニューズレターのバックナンバーは このページ からご覧いただけます。日本語版は「Japanese」リンクをクリックしてください。

 

April 2017

Mascotユーザ朝食ミーティング2017
タンパク質のFDR
Mascot を利用した論文の紹介
今月の小技
 

Mascotユーザ朝食ミーティング 2017 at インディアナポリス

第65回米国質量分析学会(ASMS Conference on Mass Spectrometry and Allied Topics)の開催に合わせ、6/5(月)と6/6(火)に「Mascotユーザ朝食ミーティング 2017 at インディアナポリス」を開催いたします。開催場所はASMSカンファレンス会場となるコンベンションセンター内の会議室(Room 137/138)です。今回は、Mascotユーザーによる事例紹介の他、弊社製品の効率的かつ効果的な利用方法や新規サポート機能などをご紹介いたします。弊社のプログラム開発技術者も参加いたしますので、直接の情報交換の場としてもお役立ていただければ幸いです。

6月5日(月)7:00〜8:00

The Future of Peptide Identification by Spectrum Library Searching presented by Stephen E. Stein, NIST

Integration of spectral library searching into Mascot Server presented by Matrix Science

6月6日(火)7:00〜8:00

The Characterization of Therapeutic Proteins by Top-down and Bottom-up Approaches presented by Paul W. Brown, Pfizer Worldwide Research and Development

New features in Mascot Server 2.6 presented by Matrix Science

参加ご希望の方は こちら からご登録ください(参加費は無料です)。開催日が近づきましたら改めてご案内メールを差し上げます。朝食がてらお立ち寄りくださいませ。

Indianapolis

タンパク質のFDRに意味はあるのか?

検索されたペプチド群のFDRはDecoyデータベースを利用することにより簡単に評価することができます。それに対して、検索結果リストに表示されたタンパク質群のFDRはペプチドのFDRとは全く別物で、評価するのは簡単ではありません。第一に、誤同定されたタンパク質とは正確にはどのようなタンパク質でしょうか?

検索結果リストのタンパク質は、配列データベースを構成するエントリであり、検索されたペプチドをひとつ以上含ますが、そのペプチドが全て誤同定の場合に、そのタンパク質は誤同定と判定するようにするのがいいのでしょうか?

検索結果リストのタンパク質から、互いに異なるアミノ酸配列を持つ2つ以上のペプチドが帰属するタンパク質を除去すると「one-hit wonders」なタンパク質を含めて「ゴミのタンパク質」をリストから消すことができます。しかしながら、ひとつのペプチドが複数のタンパク質に帰属する場合があるため、「Same-set」や「Sub-set」なタンパク質は残りますので、ペプチドが帰属するタンパク質を整理して作成したリストにはその整理方法固有の曖昧さが残ります。この 帰属関係リスト でその曖昧さが伝わるでしょうか。タンパク質F以外は実験サンプルに存在すると主張することができせん。

言い換えると、ショットガン・プロテオミクスによって作成されるタンパク質リストは、次のような項目によって影響をうけることになります。

  • 坩堝(るつぼ)状態のペプチドを相手にするという問題: 「規模とスピード」を実現するかわりにペプチドとタンパク質の関係情報が失われてしまうため、検索されたペプチドから最大節約法(Parsimony)を利用してタンパク質を推定し、タンパク質リストを作成することになります。

  • カバレージの問題: タンパク質が微量になれば検索されるペプチドの数も少なくなりますので、sequence coverageの数値で誤同定かどうかを判断することはできません。

  • 配列データベースの問題: SwissProtやNCBIprotのような公共総合配列データベースには、実験サンプルに含まれるタンパク質そのものが完全状態で格納されているのは希だと思いますので、リストされるタンパク質は同族のタンパク質になります。

  • 修飾の問題: 修飾の設定により、余計なペプチドが検索されたり、検索されるべきペプチドが検索されなかったりしますので、タンパク質リストの内容に大きく影響します。特に「Deamidation」の設定と結果の解釈には注意が必要です。

タンパク質のFDRが意味を持つのかどうかの答えの続きは ブログ をお読みください。

Poisson distribution

Mascotを利用した論文の紹介

Mascotニューズレターで取り上げてほしい話題や研究論文がありましたらぜひご紹介ください。また、Mascotニューズレターの内容に関してお気づきの点やご質問などありましたらご連絡ください。

 

A biotin enrichment strategy identifies novel carbonylated amino acids in proteins from human plasma

Jesper F. Havelund, Katarzyna Wojdyla, Michael J. Davies, Ole N. Jensen, Ian Max Møller, Adelina Rogowska-Wrzesinska

Journal of Proteomics 156 (2017) 40-51

Protein carbonylation is an irreversible protein oxidation and is an important marker of protein damage, related to oxidative stress, disease and ageing. This paper describes a new method for the identification and characterization of 14 different types of carbonylated amino acids in proteins.

The proteins were derivatized with biotin-hydrazide, trypsin digested, and then enriched with monomeric avidin resin. Hot water elution was determined to be the most effective eluting agent, outperforming other approaches. Additionally, the authors developed a script to specifically detect and remove biotin ions from spectra, improving scores for most peptides.

Using this method, they identified 125 carbonylated residues in oxidized bovine serum albumin and assigned 133 carbonylated sites in 36 proteins in native human plasma protein samples. They also detected 10 previously undetected types of carbonylated amino acids in proteins.

Thumbnail from featured publication

今月の小技

Mascotが持っているunimodデータベースにはタンパク質の研究に必要となる元素の殆どを網羅していますが、新たに元素を追加したいことがあるかもしれません。MascotはWebブラウザで動作する「Comfigulation Editor」ユーザインターフェースを実装していますが、生憎と元素を追加・変更する機能だけは(!)はサポートしていませんので、unimodデータベースのユーザ用設定ファイルである「usermod.xml」ファイルを直接編集する必要があります。なお、Mascot 2.5まではユーザ用の設定ファイルはありませんのでunimod.xmlファイルを編集することになりますが、Unimodのサイト から最新のunimod.xmlをダウンロードして更新すると上書きされてしまい、変更作業は徒労に終わりますので、ask Unimod から追加を依頼してください。

Mascot 2.6では、元素や分子に対する変更内容は専用のファイル(usermod.xml)に保存されますので、unimod.xmlを更新しても影響を受けません。ここでは、プラチナ(Pt)を例にして追加する方法をご説明します。WebElements は質量データを取得するのに便利なWebサイトです。周期律表のPt(元素番号78)をクリックすると詳細ページが表示されます。ページの最初に平均質量(Relative atomic mass 195.084)が記載されています。モノアイソトピック質量はページ下方の「Platinum isotopes」項にあります。モノアイソトピック質量は天然における存在比が最大の同位体の計算精密質量(日本質量分析学会, 「マススペクトロメトリー関係用語集第3版」の「monoisotopic mass」項より)ですので、質量数195のPtの質量である「194.964766」になります。

<Mascot 2.6での操作になります>
(1) テキストエディタで「C:\inetpub\mascot\config\unimod\usermod.xml」を開いてください。

(2) 「<umod:elements>」ブロックの「</umod:elements>」行の前の方に次の行を追加してください。

<umod:elem avge_mass="195.084" full_name="Platinum" mono_mass="194.964766" title="Pt"/>

(3) 「<umod:mod_bricks>」ブロックの「</umod:mod_bricks>」)行の前の方に次の行を追加してください。

<umod:brick avge_mass="195.084" full_name="Platinum" mono_mass="194.964766" title="Pt">
   <umod:element number="1" symbol="Pt"/>
</umod:brick>

(4) 保存した後、MascotのWelcomトップページ→「Configuration Editor」リンク→「Symbols」リンクで表示されるページにPtが追加されていることを確認してください。

WebElementにはお土産ショップもあります。周期律表をデザインした靴下はいかがでしょうか。この靴下を履けば物質を制したHomo sapiensの気分になれるかもしれません。

Periodic table socks

お問い合せ

マトリックスサイエンス株式会社

〒110-0015 東京都台東区東上野1-6-10 ARTビル1F

info-jp@matrixscience.com

電話:03-5807-7895

ファクシミリ:03-5807-7896

 

Matrix Science logo

Matrix Science Ltd, 64 Baker Street, London W1U 7GB, UK
T +44 (0)20 7486 1050  F +44 (0)20 7224 1344  E info@matrixscience.com
 

View in a web browser Forward to a colleague Unsubscribe