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2019年5月号

6/2(日)から始まる第67回ASMSカンファエンス(アトランタ)に合わせ、6/3(月)と6/4(火)に Mascotユーザーミーテング を企画しました。ご参加をお待ちしております。

「今月のブログ」では、Mascot検索にかかわる作業を自動化するMascot Daemonについてご説明します。

「今月の論文」では、タンパク質のC末端ペプチドの抽出と同定に関する研究論文を取り上げました。

「今月の小技」では、Mascot Distillerの定量計算時間を短縮するための設定等についてご説明します。

Mascotニューズレターの バックナンバーはこのページ からご覧いただけます。日本語版は「Japanese」リンクをクリックしてください。また、Mascotニューズレターの内容に関してお気づきの点やご質問などありましたらご連絡ください。

 

今月のトピックス

ユーザーミーティング
検索作業の自動化
C末端ペプチドの同定
定量計算時間の短縮設定
 

ASMS Mascot ユーザーミーティング at アトランタ

米国アトランタで6/2(日)より行われる第67回米国質量分析学会(ASMS Conference on Mass Spectrometry and Allied Topics)に合わせ、6/3(月)と6/4(火)に「Mascotユーザーミーティング 2019 at アトランタ」を開催いたします。場所はカンファレンス会場内の A410 ルームです。朝7時スタートです。朝食を準備してお待ちしております。

6/3 (月) 7:00 am ~ 8:00 am

ユーザー事例:Database searching in systems without a genome: lessons learned with the California sea lion presented by Ben Neely, Marine Biochemical Sciences Group, NIST

弊社発表:Metaproteomics with Mascot

6/4 (火) 7:00 am ~ 8:00 am

ユーザー事例:A day in the life of a database search engine: Mascot as robust and scalable tool for protein identification in a contract research environment presented by Michael Ford, MS Bioworks

弊社発表:Trypsin isn’t the only protease: Processing and searching middle down datasets with Mascot Distiller and Mascot Server

Atlanta

今月のブログ:検索作業の自動化(Mascot Daemonを使いましょう)

Mascot Daemonは高度な検索実行機能を持つMascot Serverのクライアントプログラムです。Mascot Distiller(質量ピーク抽出、定量計算)やmsConvert(質量ピーク抽出)などの外部プログラムと連携できるだけでなく、ひとつの質量データに対して複数の検索条件を組み合わせた「検索プロセス」を組み立てて実行できるため、Mascot検索にかかわる操作を自動化し、検索作業を大幅に効率化することができます。

たとえば・・・ひとつの質量RAWデータに対してMascot Distillerで質量ピークを抽出した後に「cRAP+トリプシン由来SL」のコンタミ由来データベースを使って検索を行い、有意にマッチしたペプチド(すなわちコンタミ由来ペプチド)を除いた残りのMS2スペクトルデータに対して目的のデータベースを使って再検索し、検索結果をCSVファイルに出力する・・・というような複雑な検索操作を自動化することができます。

さらに、Mascot Distillerを組み合わせれば様々な定量プロトコルに対応する自動定量解析システムとなりますし、Mascotセキュリティー機能を利用すれば、コアラボ担当者には検索依頼ユーザの代行として検索実行と検索結果閲覧の権限を与え、その検索結果に対する再検索は実行できないように設定することもできます。

また、電子メールの送信や、お客様の実験管理システムへの検索結果のインポートなど、Mascot Daemonの検索処理の開始前/終了後に実行したい外部プログラムを起動することもできますので、お客様の様々な検索処理要求に対応することができます。

ブログ で様々な使用例をご紹介していますのでご覧ください。

Daemon splash screen

今月の論文:タンパク質のC末端ペプチドの抽出と同定

Mascotニューズレターで取り上げてほしい話題や研究論文がありましたらぜひご紹介ください。また、Mascotニューズレターの内容に関してお気づきの点やご質問などありましたらご連絡ください。

 

In-depth Analysis of C Terminome Based on LysC Digestion and Site-selective Dimethylation

Xiaoxian Du, Caiyun Fang, Lijun Yang, Huimin Bao, Lei Zhang, Guoquan Yan, and Haojie Lu

Anal. Chem., Published online April 26, 2019

タンパク質のC末端配列はタンパク質の選別、活性、複合体形成などに重要な役割を担っていることが知られています。また、タンパク質同定においては特異性が非常に高い「配列タグ(sequence tag)」として利用することができます。

研究論文では、タンパク質のN末端ペプチドや中間ペプチドを除去してC末端ペプチドだけを抽出するための簡単かつ強力な手法を新たに開発し、その性能について議論しています。

  1. LysCでタンパク質をリシンのC末側で切断する
  2. ペプチドのN末端のα-NH2をジメチル化する
  3. ペプチドのリシン残基が持つアミノ基を樹脂カップリングする
  4. 遠心分離でC末端ペプチドを分離・抽出して同定する

この手法を使って、300μgのHeLa細胞由来のタンパク質消化物から781個のタンパク質C末端ペプチドを同定し、さらにインシリコ(計算機の中)で作成したLysC消化C末端ペプチドで構成したデータベースを使うことにより、検索速度と同定精度が向上すると報告しています。

Thumbnail from featured publication

今月の小技:Mascot Distillerの定量計算時間の短縮設定

Mascot Distiller の定量計算時間短縮のための設定等についてご説明します。

<全般>

  • 最新版のMascot Distiller をお使いください。Mascot Distillerのライセンスをお持ちであれば無償でアップデートできます。
  • Mascot DistillerはPCに存在するすべてのCPUコアを使って計算しますので、より高速なCPUコアをより多く搭載したPCにインストールすると効果絶大です。
  • 複数の質量データファイルで構成される大規模なデータセットの場合は、まずひとつか2つの質量データファイルを使って試し計算しながら設定を最適化すると全体的な時間効率が良くなります。

<ピーク質量抽出>

  • MS2スキャンデータがセントロイドモードで保存されている場合は、保存されているセントロイド質量をそのままピーク質量として使う設定にしてください。セントロイドデータに対してピーク抽出処理しても両者のピークリストはほぼ同じ内容になりますのでタンパク質定量も同じ結果になります。
  • いくつかのMSスキャンをチェックし、プリカーサイオンの電荷がどの程度の範囲にあるかを把握してください。意味もなく考慮すべき電荷の値を大きくするとピーク抽出処理により多くの時間を要します。

<Mascot検索>

  • 修飾設定は最小限にしてください。タンパク質の存在量を代表しないペプチドを検出しても意味がありません。
  • 目的の生物種に対応したデータベースとcRAPなどのコンタミ由来データベースを組み合わせて検索してください。目的生物種データベースとしては UniProt proteome が良い選択だと思います。

<定量>

  • いくつかの 定量設定 を試したい場合はひとつか2つのタンパク質で試し計算すると時間の節約になります。
  • [All charge states]のチェックを外すと計算量が減ります。因みにチェックすると稀に定量結果が改善することがあります。
  • [Normalisation]の計算には同定された全てのペプチドが使われますので、試し計算の際は「none」にしてください。
  • ラベルフリーの「Replicateプロトコル」では、TICのプロファイルを比較して溶出時間の最大のずれを把握し、溶出時間誤差を若干大きめに設定してください。
stopwatch on fire

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