To view this email as a web page, click here.  日本語のWeb版はここをクリックしてください

newsletter banner

「今月のブログ」では、メタプロテオミクスに代表される複雑な系のタンパク質解析には、共通ペプチドをクラスター処理して検索結果をまとめると見通しがよくなりますので、人の消化器系由来サンプルの質量データを使ってご説明します。

「今月の論文」では、シナプスを構成するタンパク質の修飾クロストークと慢性ストレス障害の関係を考察した研究論文を取り上げました。

「今月の小技」では、検索パラメータとしてひとつの種類のアミノ酸残基に対してFixedな修飾とVariableな修飾を指定した場合の検索動作についてご説明します。

Mascotニューズレターの バックナンバーはこのページ からご覧いただけます。日本語版は「Japanese」リンクをクリックしてください。また、Mascotニューズレターの内容に関してお気づきの点やご質問などありましたらご連絡ください。

 

今月のトピックス

共通ペプチドを利用したクラスター処理
翻訳後修飾クロストーク
Fixedな修飾のVariableな修飾による置換
 

共通ペプチドを利用したタンパク質のクラスター処理

2019年6月号のMascot Newsletter でご紹介したように、 メタプロテオミクスでは個々の微生物由来ではなく、微生物叢全体に対するタンパク質を解析しますので、通常はショットガンの手法を利用した質量分析が行われています。

メタプロテオミクスでは、利用できる配列データベースも少なく、また内容も不完全ですし、複数の類似細菌株や種が含まれている可能性が高いために多数の類似タンパク質が存在すると考えられますので、同定された(多数のタンパク質に共通する)ペプチドがそのサンプルに固有なデータであると考えて検索結果を整理することが需要です。

Mascotの「Protein Family Summary表示モード」では、検索でマッチしたすべてのペプチドを使って、それらのペプチドが帰属するタンパク質をクラスター処理(タンパク質間の「距離」を計算)し、共通ペプチドに基づくタンパク質をクラスター化して、タンパク質ファミリーとして表示します。ファミリーには共通ペプチドを持つ異なる種のタンパク質も含まれますので、構成が複雑なサンプルの検索結果の解析に役立ちます。

ヒトの腸内微生物叢の解析例を ブログ にまとめましたのでご覧ください。

また、次の 日本語マニュアル の26頁「タンパク質の推定」と30頁「Protein Family Summary (MIS/SQ)」もご参考にしてください。

Unipept

シナプスタンパク質の翻訳後修飾クロストークとストレス障害

Mascotニューズレターで取り上げてほしい話題や研究論文がありましたらぜひご紹介ください。また、Mascotニューズレターの内容に関してお気づきの点やご質問などありましたらご連絡ください。

 

Stress-induced Changes in the S-palmitoylation and S-nitrosylation of Synaptic Proteins

Monika Zareba-Koziol, Anna Bartkowiak-Kaczmarek, Izabela Figiel, Adam Krzystyniak, Tomasz Wojtowicz, Monika Bijata, and Jakub Wlodarczyk

Molecular & Cellular Proteomics, 18 1916-1938 (2019)

この研究論文では、シナプスを構成するタンパク質のS-パルミトイル化とS-ニトロシル化を同時に同定するために、ビオチンスイッチ法と質量分析法を組み合わせた解析手法(PANIMoni)を新たに開発し、慢性的にストレスを受けたマウスモデルのシナプス後肥厚部タンパク質に関して、S-パルミトイル化とS-ニトロシル化の翻訳後修飾分布を解析した結果、シナプスにおける情報伝達、タンパク質の局在、シナプス可塑性の調節に関与するタンパク質のS-パルミトイル化とS-ニトロシル化の不規則なクロストークが慢性ストレス障害に関係する要因のひとつであり、シナプスネットワークの不安定化につながっている可能性があると報告しています。

右図はS-ニトロシル化修飾をビオチン化する際のブロック図です。S-パルミトイル化修飾に対してはアスコルビン酸の代わりにヒドロキシアミンを使います。

Thumbnail from featured publication

Fixedな修飾のVariableな修飾による置換

ひとつの種類のアミノ酸残基に対してひとつのFixedな修飾を指定することができますが、二つ以上は指定できません。たとえば、Carbamidomethyl (C)とPropionamide (C)をFixedな修飾として同時に指定するとエラーになり、Mascot検索は停止します。しかしながら、システインはCarbamidomethyl (C)あるいはPropionamide (C)で必ず修飾されているという実験プロトコルも考えられますので、この場合は一方の修飾をFixed、もう一方の修飾をVariableに指定してください。Fixedな修飾をVariableな修飾で置き換えて(システインがひとつの場合は-C-と-P-の二つを)検索します。 複数のシステインが存在する場合はこれらふたつの修飾の組み合わせ(システインが二つの場合は-C-C-、-C-P-、-P-C-、-P-P-)をすべて検索します。Fixedな修飾の条件の下でVariableな修飾を考慮しますので、Variableな修飾だけの検索に比べて検索負荷は軽くなります。

同位体ラベルを伴う実験に対応する修飾設定については 2019年6月号のMascot Newsletter をご覧ください。

Mascot tip

お問い合せ

マトリックスサイエンス株式会社

〒110-0015 東京都台東区東上野1-6-10 ARTビル1F

info-jp@matrixscience.com

電話:03-5807-7895

ファクシミリ:03-5807-7896

 

Matrix Science logo

Matrix Science Ltd, 64 Baker Street, London W1U 7GB, UK
T +44 (0)20 7486 1050  F +44 (0)20 7224 1344  E info@matrixscience.com
 

View in a web browser Forward to a colleague Unsubscribe