DE(ジエチル)標識 vs DM(ジメチル)標識
ペプチドのN末端とリジンのアミノ基をジメチルで標識する3-plexジメチル化法(-CH3, -CHD2, -13CD3)では、ジメチル化試薬に重水素を利用しているために標識ペプチドの保持時間にズレ(重水素効果)が生じますので、ラベルフリー定量解析を行う際はこの時間的なズレを補正する必要があります。Mascot Distillerでは定量計算対象ウインドウ内で溶出時間をシフトすることにより対応していますが、この処理に要する定量計算時間は増加しますし、XICのピーク強度が弱かったりノイズ成分が多い場合は補正しにくくなります。
最近論文発表された3-plexのジエチル標識(-CH2CH3, -CH213CH3, -13CH213CH3)は13Cを利用していますので3-plexジメチル化法に見られるような重水素効果はなく、しかも3-plexジメチル化法に比べて定量精度が向上しています。Mascot Serverにはこの新しいジエチル標識は初期登録されていませんが、Configulation Editorを使って簡単に追加登録することができます。「Modifications」リストに新規修飾として「CH213CH3」と「13CH213CH3」を登録した後、「Quantitation method」リストに新規に「3-plexジエチル標識メソッド」(登録名称はたとえば「Diethylation [MD]」)を定義・登録してください。
PRIDEにアップされた質量データを使って追試したところ、どちらの標識でも定量比の中央値は仕込み比率(1:2:4)に近い値を示しましたが、ジエチル標識の方がより多くのペプチドを定量化することができ、定量精度が向上しました。
「3-plexジエチル標識メソッド」の定義・登録方法と定量結果については ブログ にまとめてありますのでご覧ください。
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