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Mascot Server 2.7をリリースしました。Mascot Serverの保守・技術サポート契約をお持ちのお客様にはバージョンアップキットの準備が整い次第お送りいたしますので、今しばらくお待ちください。

「今月のブログ」では、プロテオミクス実験ワークフローの再現性が問題になることがありますが、Mascotではどのように対応しているかをご説明します。

「今月の論文」では、イオンモビリティ(FAIMS)を利用したヒストンのプロテオフォーム解析に関する研究論文を取り上げました。

「今月の小技」では、スペクトルライブラリの修飾名とUnimodの修飾名が異なる場合のマッピング方法についてご説明します。

Mascotニューズレターの バックナンバーはこのページ からご覧いただけます。日本語版は「Japanese」リンクをクリックしてください。また、Mascotニューズレターの内容に関してお気づきの点やご質問などありましたらご連絡ください。

 

今月のトピックス

Mascot検索の再現性
イオンモビリティ FAIMS
SL修飾名マッピング
 

Mascot検索の再現性

プロテオミクス実験ワークフローの再現性の悪さはそれを構成する機器やプロセスの「ばらつき」に起因するところが大ですので、いかに「ばらつき」を制御するかが重要になります。一方、データ処理は「計算」ですので、同じ入力と処理条件に対して出力が同じになるようなしくみを整備することが重要になります。

Mascotは検索に関わる全てのデータ(入力ピークリスト、検索条件、Mascot Distillerの処理条件、ファイルパス、Mascotバージョン、ユーザのコメント、日時情報など)を検索結果ファイル(*.dat)に格納することにより、再検索に対する検索結果の再現性を保証しています。ただし、検索対象のデータベースはサイズが大きいため保存対象からは外していますので、データベースの内容が変動する場合は対象となるバージョンをバックアップまたはコピーを残してください。

Mascotのバージョンによって検索結果に違いが出ないように、バージョン間の互換性を維持するようにソフトウエア開発を進めています。また、新しい機能の実装により検索結果が異なる場合は、その機能を無効にするオプションを追加するなどの対策をしますが、それでもやはり結果が異なる場合はご連絡ください。なお、不具合の解消により結果が異なることがありますのでご了承ください。

詳しい内容を ブログ にまとめましたのでご覧ください。

Movie theatre

LC/FAIMS/MS/MS/Mascotを使ったヒストンテール解析

Mascotニューズレターで取り上げてほしい話題や研究論文がありましたらぜひご紹介ください。また、Mascotニューズレターの内容に関してお気づきの点やご質問などありましたらご連絡ください。

 

Middle-Down Proteomic Analyses with Ion Mobility Separations of Endogenous Isomeric Proteoforms

Pavel V. Shliaha, Vladimir Gorshkov, Sergey I. Kovalchuk, Veit Schwammle, Matthew A. Baird, Alexandre A. Shvartsburg, and Ole N. Jensen

Analytical Chemistry 92 2364-8 (2020)

この研究論文では、FAIMS(Field Asymmetric waveform Ion Mobility Spectrometry:イオンの移動度がその形や重さよりも印加電圧に依存する場合、その性質をフィルターとして機能させてイオン種を分離した後に質量分析する手法)とミドルダウンプロテオミクス(消化酵素としてGlu-Cを使用)を組み合わせて、マウス胚性幹細胞から抽出したヒストンH3のヒストンテールを解析した結果、526個(FAIMSを使わない解析に比べて2.5倍)のプロテオフォームを同定することができ、右図に示すようにシーケンスカバレッジも向上したと報告しています。

なお、測定は9通りのFAIMS補償電圧(80〜140V/cm、7.5V/cmステップ)毎に行い、各々150分の溶出時間を要したため、全体の分析時間はカラムの平衡化を含めて30時間となりましたが、使用したFAIMSデバイスはRMS>60,000およびETDをサポートする質量分析計に実装することができ、質量分析計のソフトウエアとは独立したドライバーソフトウエアで操作できると報告していることから、「LC/FAIMS/MS/MS/Mascot」システムの組み立ては導入コストも含めて難しくはないのかもしれません。

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SLに含まれる修飾名のUnimodへのマッピング

Mascot 2.6では、スペクトルライブ(SL)に含まれる修飾名がUnimodに登録されていない場合はPeptide Viewページにプロダクトイオン表が表示されないという問題がありましたが、Mascot 2.7では設定ファイル「library_mod_aliases」を新規に導入し、次のような書式でSLの修飾名とそれに対応するUnimodの修飾名のエントリを定義して両者をマッピングできるようにし、この問題を解決しました。SLを構築(または再構築)すると、*.nist_formatファイルにマッピングの内容が反映されます。

  • "CAM" = "Carbamidomethyl"
  • ("SLの修飾名” = “Unimodの修飾名)

PRIDEは修飾名の代わりに質量の値を使っていますので、数値の丸め誤差を考慮してUnimodの修飾名を調べる必要があります。たとえば、PRIDE_Contaminantsでは微妙に異なる「125.047679」と「125.047678」がありますが、これはNethylmaleimideを表現していますので、次のように2つのエントリを定義するとうまく動作します。

  • "125.047678" = "Nethylmaleimide"
  • "125.047679" = "Nethylmaleimide"

[Database status]リンクページの[Statistics]リンクをクリックするとマッピングされている修飾名を確認することができます。右図はPRIDE_comtaminantsの例を示しています。矢印(=>)がついているエントリはUnimodにマップされていますが、矢印がないエントリ(たとえば「37.006603」)はマップされていませんので、Peptide Viewページにプロダクトイオン表は表示されません。

なお、「library_mod_aliases」のブラウザベースのエディタはありませんのでテキストエディタを使って直接編集してください。

Mascot tip

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