クリスマス休暇の期間中に脳を鍛えるため、de novoシーケンシングのコンペを準備いたしました。入力データであるMS/MSスペクトルデータはMGFのピークリストとしてこちらからダウンロードできます。ペプチドは修飾されている可能性もありますし、トリプシン処理されたペプチドと決まっているわけでもありませんのでご注意ください。配列決定に至るプロセスはどのような方法でも構いません。答えがわかりましたらnewsletter@matrixscience.com宛てに、12月24日の正午までにメールを送信してください。正解された方から抽選で3名様にプレゼントを差し上げます。また選ばれた3名の方に対応して100ドルずつ、WHOの新型コロナウイルス感染症連帯対応基金に寄付をさせて頂きます。さらに当選者のお名前は来月の弊社ニューズレターに掲載いたします(匿名を希望される場合を除く)。なお今回のものとは別のデータですが、Mascot Distillerを使ったde novo sequencingの解析とその顛末は10月のブログ記事(英語、日本語)で紹介しています。
続いて、通常のニューズレター記事のご案内です。
今月のブログでは、配列データベース管理に関するヒントをいくつかピックアップしてご紹介します。
今月の論文では、ペプチドやタンパク質のADPリボシル化とその修飾位置を特定するための新しい手法を発表した論文をご紹介します。
今月の小技では、データベース検索の実用的なヒントが満載のレビュー論文をご紹介します。
Mascotニューズレターのバックナンバーはこのページからご覧いただけます。日本語版は「Japanese」リンクをクリックしてください。また、Mascotニューズレターの内容に関してお気づきの点やご質問などありましたらご連絡ください。
配列データベースの管理において、お客様の元で発生するいくつかの問題がございます。ここではそれらのトラブルの内容と対処法についてご紹介します。
Peter M. Gehrig, Kathrin Nowak, Christian Panse, Mario Leutert, Jonas Grossmann, Ralph Schlapbach, and Michael O. Hottiger
Journal of the American Society for Mass Spectrometrypublished online November 3, 2020
ADP-リボシル化されたペプチドの修飾および部位の同定は、修飾されたペプチドの不安定性や修飾の可能性があるアミノ酸がペプチド内に多数存在する事が多いため、非常に難しい問題です。著者らは、トリプシン消化しADP-リボース結合マクロドメインタンパク質を使って濃縮したHeLa細胞と野生型マウスの骨格筋組織のサンプルを解析に使用しました。HCD(高エネルギー衝突解離)サーベイスキャンを用いたLC-MS/MSに、HCDをトリガーとしたEThcD MS/MSを組み合わせる事で、ADP-リボース構成部位、またはペプチド骨格部位でフラグメンテーションしている大量のスペクトルを得る事ができました。
測定スペクトルの解析から得た知見をもとに、著者らはデータベース検索においてbおよびyイオンからの583.08 Daフラグメントの損失(ニュートラルロス)を含むようにADP-リボシル修飾の設定をカスタマイズして検索を行ったところ、ADP-リボシル化ペプチドの同定数が30%以上増加しました。アサインされるプロダクトイオンスペクトルのピーク数が増えた事で、ペプチド同定スコアもPTM局在化スコアも改善されました。
ADPリボシル化アルギニンを豊富に含むサンプルについては、HCDによるフラグメンテーションの適用と、583.08 Daのニュートラルロスを考慮した検索の実施をお勧めします。一方、ADP-リボースとセリン、グルタミン酸、またはアスパラギン酸とのO-グリコシド結合は不安定で、この結合部位がフラグメンテーションの開裂部位となってしまいます。そのため修飾位置を判断する材料となるようなフラグメントピークが得られにくく、これらのアミノ酸への修飾の同定並びに位置特定は難しいと言えるでしょう。
Mascotニューズレターで取り上げてほしい話題や研究論文がありましたらぜひご紹介ください。また、Mascotニューズレターの内容に関してお気づきの点やご質問などありましたらご連絡ください。
今月の小技では、解析に役立つたくさんの素晴らしいヒントが満載された論文をご紹介します。
Spectral quality overrides software score - A brief tutorial on the analysis of peptide fragmentation data for mass spectrometry laymenオープンアクセスの論文です。解析プログラムを使用するうえで注意するべき点を、実例と共にまとめています。今後皆様が質量分析の初心者の人達から依頼された解析結果を送り返す時に、この論文のコピーも一緒に送ってみましょう。
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