2021年2月号

今月のブログでは、シングルサインオンについてご紹介します。シングルサインオンを実装する事で、簡単なログイン操作でセキュリティレベルを高める事ができます。

今月の論文 では、ジルコニウムやチタンの磁性粒子によるリン酸化ペプチド捕捉性能について調べた論文をご紹介します。

今月の小技 は、variable modificationのパラメータに関する内容です。

Mascotニューズレターのバックナンバーはこのページからご覧いただけます。日本語版は「Japanese」リンクをクリックしてください。また、Mascotニューズレターの内容に関してお気づきの点やご質問などありましたらご連絡ください。

シングルサインオンとMascotのセキュリティレベル向上

MASCOTの機能の1つであるMascot Security 機能によって、結果レポート、データベース、カスタム変更へのアクセスをユーザーやグループレベルで許可したり制限したりといった制御が可能です。一方で、強力なハッカーであればそれほど難しくなくセキュリティの抜け穴を見つけてしまう可能性があります。

アクセスに関するセキュリティを強化したいという事であれば、Mascot サーバーをファイアウォールの後ろに置くか、強力な認証システムと併用してアクセスを制限するといった対処をお勧めします。認証システムとの併用に関連して今回ご紹介するのがシングルサインオン(SSO) システムです。シングルサインオンシステムとはご利用の際最初に一度だけ認証すれば、以降関連する複数のアプリケーションやソフトウェアシステム利用時にその都度ログインをしなくともよいシステムの事です。MascotServer はデフォルトで認証システムと直接統合しておりませんが、既存の様々な認証システムと組み合わせて利用する事ができます。認証に関する複雑な機能はすべて認証システム側に依存する事になります。

Webブラウザは最初のログイン要求を受けた段階でユーザーに関する情報をWebサーバーに送信し、認証システムと相互にやりとりをします。認証が成功するとWebサーバーは認証されたユーザーの名前をMascot Securityのユーザーデータベース側に渡します。Mascotのユーザーデータベースに該当ユーザーが存在する場合、パスワードの入力を求められることなく自動的にMascot に「ログイン」できます。

この機能を実現させるためには、MASCOT Server側でMascot ユーザー名とWEBサーバーから引き渡された外部ユーザー名が一致していることを確認し、さらにそのMascot ユーザーがWebサーバー認証機能を使用するよう、予め設定しておく必要があります。SSO の設定についての詳細はこちら(英語日本語訳)を参照してください。

ジルコニウム(IV)-IMACの再来:磁性微粒子によるリン酸化ペプチドのアフィニティー濃縮がもたらす性能・同定カバレージの向上

Zirconium(IV)-IMAC Revisited: Improved Performance and Phosphoproteome Coverage by Magnetic Microparticles forPhosphopeptide Affinity Enrichment

Ignacio Arribas Diez, Ireshyn Govender, Previn Naicker, Stoyan Stoychev, Justin Jordaan, and Ole N. Jensen

J. Proteome Res. 2021 20(1) 453-462

著者らは、タンパク質消化物中のリン酸化ペプチドの濃縮における溶媒条件の影響を調査しました。Zr-IMAC磁性微粒子とTi-IMACおよびTiO2を6種類のヒドロキシ酸溶液下で比較し、捕捉されたペプチドについてLC-MS/MSで解析を行いました。

最適な濃縮方法と評価された、Solvent2/Zr-IMAC、Solvent3/Ti-IMAC、およびSolvent1/TiO2の組み合わせについては、ヒトHepG2/C3A細胞のトリプシン消化物の解析でさらに追加の評価を行いました。この追加の評価においてはS2/Zr-IMACの処理が最も多くのペプチドを回収することができ、4624のリン酸化ペプチドを同定できました。対してS3/Ti-IMACでは4072、S1/TiO2では2744でした。

トータルではS2/Zr-IMAC、S3/Ti-IMAC、およびS1/TiO2の組み合わせにより5173個のリン酸化ペプチドが同定されました。これらのリン酸化ペプチドの半分近く(44%)は、3つの方法すべてによって同定されています(2278)。S2/Zr-IMAC法では、方法固有のリン酸ペプチドが最も多く(829)、全体の16%に該当します。

次に著者らは、これらの方法を標準的なFe-IMAC法と比較しました。同定されたリン酸化ペプチドの総数は同程度でしたが、磁性微粒子を用いた濃縮はリン酸化ペプチドの選択性が高く、全同定ペプチドの90%以上がリン酸化ペプチドでした(それに対してFe-IMACは78%でした)。

Mascotニューズレターで取り上げてほしい話題や研究論文がありましたらぜひご紹介ください。また、Mascotニューズレターの内容に関してお気づきの点やご質問などありましたらご連絡ください。

variable modificationのパラメータ

Mascot tip

Mascot Server 2.7ではvariable modification検索をより高度に調整可能となりました。3つのパラメータを使用して、より高速に、またはより深みのある検索を行うことができます。

  • MaxPepNumVarModsは、個々のペプチドにて考慮するVariable modificationの(種類の)最大数です。デフォルトは3ですが、ヒストンなど非常に長いペプチドに修飾可能性がある残基を多く持つようなタンパク質を研究している場合、検索速度は遅くなってしまいますがこの値を上げて、もれなく検索することができます。
  • MaxPepNumModifiedSitesは、ペプチドあたりの修飾残基の最大数です。やはり修飾可能性が多様にわたる検索をしなければならない場合、デフォルト値の 5から設定値を増やして検索する事ができます。
  • MaxPepModArrangementsは、個々のペプチドにおけるvariable modificationの組み合わせ数の最大値です。デフォルト値は64です。修飾組み合わせの検証を掘り下げる必要がない場合、これらの設定値を減らす事で検索速度の向上というメリットを享受することもできます。

これらのパラメータが検索結果にどのような影響を与えるかについては、最近のブログ記事(英語日本語)でその実例を見ることができます。

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