10/31 – 11/4 にフィラデルフィアで開催されたASMSでは、たくさんの方にブースにお越しいただきました。誠にありがとうございました。
ASMSプレゼンテーション動画では、MASCOT Server, Distiller 新バージョンで追加された機能をご紹介するプレゼンテーション[動画]をご紹介いたします。
今月の論文は、3Dバイオプリンティングのバイオインクに対する研究をご紹介します。
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Jacqueline Kort-Mascort, Guangyu Bao, Osama Elkashty, Salvador Flores-Torres, Jose G. Munguia-Lopez, Tao Jiang, Allen J. Ehrlicher, Luc Mongeau, Simon D. Tran, and Joseph M. Kinsella
ACS Biomater. Sci. Eng., online October 18, 2021
がん研究において、in vitro単層細胞培養システムや前臨床in vivo小動物腫瘍異種移植片を利用する一般的な方法は生体内にある3次元的な構造をとっている時と状況が異なります。そのためネイティブなヒト腫瘍には存在しない生物学的手がかりを誤って提示してしまうなどの可能性があります。この問題を解決するため、著者らは3Dバイオプリンティング時に腫瘍細胞などを封入する事が可能な材料(バイオインク)の開発・改良を検討しました。材料についてはバイオプリントが可能であるかどうか、細胞増殖性、スフェロイド形成の容易さ、硬さという観点から評価を行いました。
著者らは脱細胞化した豚の舌組織からバイオインクを調製し、レオロジー調整剤として加えるアルギン酸ナトリウムとゼラチンの最適な重量比を模索しながら組み合わせました。脱細胞化した豚の舌組織をLC-MS/MSで分析したところ、タンパク質にはさまざまな種類のコラーゲン、ラミニン、グリコサミノグリカンが含まれており、中でもコラーゲンは細胞外マトリックスタンパク質全体の90%以上を占める最も豊富な構造タンパク質でした。
著者らはこの複合材料について力学的な面と生化学的特性を評価した上で、ヒト頭頸部扁平上皮癌細胞をカプセル化するバイオインクとして使用しました。3Dバイオプリンティングで作成された3次元構造体では高い細胞生存率を維持し、増殖をサポートしながら19日間にわたってがん細胞を腫瘍スフェロイドに成長させました。
また用量反応実験では、平面モデルと比べ3Dモデルを用いた場合でシスプラチンと5-フルオロウラシルのIC50値が増加しました。3Dモデルで感度が低下した事になりますが、これはむしろ平面での培養の方が非生理的な条件であったため(むしろ過敏だった)と考えられます。
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