今月のブログは、古代のタンパク質の解析に関する最近のレビューについてです。
今月の論文は、子宮内膜癌のバイオマーカー探索に関する研究です。
今月の小技は、最新版MASCOTをご利用頂く事のメリットについてです。
Mascotニューズレターのバックナンバーはこのページ(英語版、日本語版)からご覧いただけます。ご一読の上、ご意見・ご質問等ございましたら、お気軽にお問い合わせください。
最近、古代プロテオミクス(パレオプロテオミクス)に関してのレビューが発表されました。古代タンパク質のサンプル処理とデータ解析で発生する多くの課題に焦点を当てています。 第一の課題は、サンプルの収集と調製、特にタンパク質を検出できるかどうかです。何百年も(あるいは何百万年も)土や微生物、水など、保存という面では不都合な物質に囲まれている場合、タンパク質は続成作用によって大きく変性していたり、ほとんど残っていなかったりする可能性があります。
次の大きな課題は使用するタンパク質/塩基配列データベースです。地元の野菜、哺乳類、鳥類、魚類など、歴史的・地理的に重要な種に対して、その配列がカバーできない(データベースに配列が含まれない)場合があります。メタプロテオミクスと同じような問題です。対処法としてde novo sequencingも一つの方法ですが、より現実的な方法は、できるだけ多くの生物種から網羅的な配列データベースを作ることです。 Earth Biogenome Projectなど、いくつかの大きなプロジェクトではこれに適したデータが公開されています。ターゲットと全く同じ種がデータベースに入っていなくても、同じ属や科のデータがあれば解析の助けになるでしょう。
古代のタンパク質において、続成作用に伴って脱アミド化のような発生する修飾は頻発しています。それを利用して逆に古代のタンパク質であるという認証に利用することができます。もし同定されたタンパク質にある程度の損傷がない場合、それは研究室での汚染物質である可能性があります。 今回ご紹介しているブログ記事(英語版、日本語版)では、これら古代タンパク質の探索結果を向上させるための提案や小技の紹介を行っています。
Eduardo Sommella, Valeria Capaci, Michelangelo Aloisio, Emanuela Salviati, Pietro Campiglia, Giuseppe Molinario, Danilo Licastro, Giovanni Di Lorenzo, Federico Romano, Giuseppe Ricci, Lorenzo Monasta and Blendi Ura
著者らは、がんの発生と進行のバイオマーカーとなりうる、血清エクソソーム中に放出される子宮内膜がん(EC)の主要伝達物質を探索しました。エクソソームは多胞体に由来するマイクロベシクルで、直径は30-100nmです。
EC患者血清のエクソソームプロテオームの特徴を明らかにするため、まずEC患者12名と対照者12名のアルブミン除去血清からエクソソームを単離しました。著者らは Mascot DistillerのReplicate Protocolを使用したラベルフリー定量解析を行っています。Replicate Protocolでは複数のデータセットから抽出したプリカーサーのイオンクロマトグラムの相対強度を質量と溶出時間からアライメントした解析を行う事ができます。解析の結果、最初に同定された421のタンパク質(群)のうち、31のタンパク質が1.5倍以上の変化を示しました。
より堅牢なモデルを構築するために、著者らはfold change >3.5の8つのタンパク質を選択しました。 その結果、これらのタンパク質の情報から感度83%、特異度71%の予測モデルが得られました。ECのStage 1なのかそれより進行した状態かという分離に限定した場合、感度100%、特異度86%を達成しています。
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プロジェクトの継続性など、MASCOTの古いバージョンのご利用し続けているのには何か理由があるかと思います。しかし新しいバージョンのご利用にもメリットがあります。もし検索に関する追加機能にあまり興味が持てなくとも、プログラムのバグの修正や外部環境の変化に対応するための処置が必要なケースもあります。最近ではUniProtのREST APIが変更され以前のバージョンではデータベース更新ができなくなった問題に対応したり、NCBIprotが巨大化しデータベースの構築に問題が生じるようになった件に対応しました。OS自体のサポートが終了することもあり、Mascot Server 2.7以前(、特に2.6以前)はWindows 11やServer 2022で動作するのが非常に難しくなりました。Mascotはリリースごとに新しい機能を追加していますが、我々は機能の追加ばかりに目を向けておらず、以前のバージョンとの互換性と再現性を維持する事に特に意識を置いています。どうぞお気軽にアップデートを実施してください。
Mascotのアップデート操作は非常に簡単で、インストーラーを入手して実行するだけです。設定ファイル、検索結果、配列データベースはすべて保持されます。Mascotが動作しているPCが数年前のものであれば、新しいハードウェアに移行することで、データベースの検索速度を2倍にすることができます。(訳者注:日本のお客様でver.2.6からアップデートされる方は使用可能なコア数宇も1.5倍となり、さらに速度が向上します。)Mascotライセンスの移動は無料です。また、旧システムを廃止する前に新システムをテストするため30日間のテンポラリーキーを提供する事も可能です。WindowsからLinuxへ、またはLinuxからWindowsへプラットフォームを変更したい場合、ライセンスがサポート期間内であれば無料で変更できます。保守状態に戻すには、保守を遡っていただくか、最新版へのアップデートを購入して頂きます。このアップデートには1年間の保守契約が付属します。アップするバージョン数により値段が異なりますので、詳しくは弊社までお問い合わせください。
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