先日カリフォルニア州アナハイムで開催されたASMSカンファレンスで、多くのユーザーの皆様にお会いする事ができました。ミーティング・ブースにお越し頂き誠にありがとうございました。 今回のニューズレターでは、カンファレンスで発表された内容についてご紹介いたします。 Mascotを使った研究として、がんプロテオミクス、バイオマーカー探索、定量プロテオミクス、バイオ医薬品など様々な発表がなされました。以下にその一部を要約します。
Mascotニューズレターのバックナンバーはこのページ(英語版、日本語版)からご覧いただけます。ご一読の上、ご意見・ご質問等ございましたら、お気軽にお問い合わせください。
ASMSにおいて弊社は朝食ミーティングを実施しました。Mascot Serverの次期バージョンのベータ版リリースが間近に迫っています。 その新機能の一部をご紹介します。
機械学習アルゴリズムの採用
Mascotの次のバージョンでは、ゲント大学のLennart Martensグループが開発した、AIによるペプチド同定の再スコアリングプラットフォーム、MS2Rescoreを統合する予定です。私たちがMascotで目指すのは「簡単な操作」、ボタンをクリックするだけでより良い結果が得られるようにすることです。そのためにDeepLCとMS2PIPのモデル選択を、Protein Family Summaryレポートのメニューコントロールに統合しました。
より高速なError Tolerant検索
現在、MascotのError Tolerant検索では予期しない修飾の探索においてUnimodのすべてのエントリを試しますが、その数は2000を超えます。しかし大抵の場合、検討するのも無駄な修飾の種類はおおよその見当がつきます。Mascotの次のバージョンでは、AA置換、同位体ラベル、人工修飾など、特定の修飾カテゴリーをError Tolerant検索から除外することができます。これにより、検索がより速くより正確になります。
Mascot Distillerによるカスタムレポート
現在リリースされているMascot Distiller 2.8には、ANOVA、階層クラスタリング、K-meansクラスタリング、PCA、ボルケーノプロットのグラフ表示や定量データの出力など、14種類のレポートが同梱されています。PythonとMascot Parserライブラリの知識があれば、新しい使用例やワークフローのために独自のカスタムレポートを作成することができます。
Mascot Daemon Export Extenderを使用したレポートの自動作成
Mascot Daemonはタスクの前後に自動的にアクションを実行することができます。これらは「External Processes」ダイアログで設定しますが、このメカニズムは非常に柔軟である反面、コマンドでの指定などで多少の複雑さが伴います。そこで私たちはMascot Daemon Export Extenderという補助プログラムを作成し、Distiller定量レポートを簡単にExternal Process 経由で出力できるようにしました。
ASMSでは毎日何百ものポスターが発表されたため、残念ながらMascotを使用した研究に関するすべてのポスターをここに掲載することはできません。今回は、タンパク質の同定、定量、特性解析にMascotを利用した興味深いプレゼンテーションのいいくつかをご紹介します。
Chemical Proteomic Strategy Utilizing a Photoreactive Chloroalkane Capture Tag for Target Discovery (TP680)
Alba Katiria González Rivera, Robin Hurst, Sergiy Levin, Michael M. Rosenblatt, Rachel Friedman Ohana
適切な光架橋と高選択的濃縮のための機能を有する多方面クロロアルカン捕捉タグを利用した、合理的なターゲットデコンボリューション戦略。
Identification of 15-keto-PGE 2 post-translational protein modifications by LC/MS/MS to study an anti-inflammatory therapy (TP720)
Fu-An Li, Ling-Hui Wang
食事誘発性NASHに対する新規の抗炎症療法として、15-ケト-PGE 2の投与が有効である可能性を示唆。
Peptide Biomarkers in Human Breast Milk: Mass Spectrometry-Based In-Solution Proteomics Analysis for Early Detection and Treatment of Breast Cancer Development (WP066)
Victor Tochukwu Njoku, Danielle Whitham, Lilian Corrice, Brian T. Pentecost, Kathleen F. Arcaro, Costel C. Darie
乳癌の早期発見と治療を目的として、ヒト母乳特異的なペプチドバイオマーカーについて検証。
Acetylome analysis of aspirin treated AML cell lines using label-free LC-MS/MS reveals potentially cytostatic modifications in cytosolic and mitochondrial proteins (ThP139)
Luke Higgins, Tommy Shields, Vinothini Rajeeve, Pedro Rodriguez Cutillas
AMLにおけるアスピリン誘導アセチロームに対する初めての解析により、タンパク質のアセチル化に対するアスピリンの新たな作用を示唆。
Proteomic evaluation of tardigrades following ionizing radiation reveals increase in DNA repair pathways (ThP791)
Evan R Stair, Courtney Clark-Hatchel, Bob Goldstein, Leslie M. Hicks
電離放射線に対するクマムシの耐性メカニズムの解明。
Mascotニューズレターで取り上げてほしい話題や研究論文がありましたらぜひご紹介ください。また、Mascotニューズレターの内容に関してお気づきの点やご質問などありましたらご連絡ください。
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