今月のお知らせ(1)は、新たにリリースされたMascot Server 3.0についてです。機械学習、Error Tolerant検索の改良、Mascot Daemon 3.0など、盛りだくさんの内容です。
今月の論文は、熱プロテオームプロファイリングとアフィニティー限外ろ過質量分析法の統合を用いて、標的タンパク質と結合する天然物を決定する手法に関する研究です。
今月のお知らせ(2)は、10月20日から24日までドイツのドレスデンで開催されるHUPO World Congressについてです。弊社ブースでMascot Server 3.0のライブデモをご覧ください。
Mascotニューズレターのバックナンバーはこのページ(英語版、日本語版)からご覧いただけます。ご一読の上、ご意見・ご質問等ございましたら、お気軽にお問い合わせください。
先日Mascot Server 3.0がリリースされました。日本語によるインストール手順書など各種書類を添え、2週間以内にすべての利用権をお持ちのユーザーにお届けできる予定です。
Mascot Server 3.0では、AIによるペプチド同定の再スコアリングのための強力な新機能が追加され、カバレージと感度を向上させる事ができます。
MS2Rescoreには、保持時間予測のためのアルゴリズムDeepLCと、MS2フラグメンテーションスペクトルを予測するためのアルゴリズムMS2PIPが組み込まれています。どちらのツールもあらゆる種類の実験においてデータベース検索結果の感度を向上させることが実証されています。例えば内在性ペプチド、プロテオゲノミクス、メタプロテオミクスといった分野ですが、勿論これだけに留まりません。
Error Tolerant検索[二段階検索]についても改善されました。Error Tolerant検索では、酵素の切断箇所の特異性の揺らぎや、自身の検索条件指定では検出できなかった化学修飾や翻訳後修飾を同定する事ができます。今回の改善では2段階目に探索する修飾について、種類別に分類されたサブグループを指定できるようになり、2段階目の検索における検索空間を狭める事ができるようになりました。例えば、翻訳後修飾のみを検索したり、N-結合型グリコシル化のみを検索したりすることができます。これにより、検索の高速化やFalse Positive ヒットの減少が期待されます。
この他Mascot Server 3.0では、Mascot Search Results (MSR)という新しいファイル形式が導入されました。これは、読み取りパフォーマンスが最適化された自己完結型のSQLiteファイルです。検索結果の閲覧やエクスポートといった操作がより速く実行されます。
システムの様々な面において再設計が行われましたが、一方でMascot Serverは強力な後方互換性を維持しているので、これまでの使い方でも引き続きご利用する事ができます。さらに、数十の新しいヘルプページとチュートリアルが改善・追加されました。
Mascot Server 3.0の詳細については、こちらをご覧ください。
Hengyuan Yu, Yang Chen, Yichen Wang, Weiliang Fu, Rui Xu, Jie Liu, Yong Chen, Xuesong Liu, Yongjiang Wu, and Tengfei Xu
Analytical Chemistry, Articles ASAP, published online: September 10, 2024
過去40年間にFDAによって承認された低分子治療薬の60%以上が天然物をルーツとしています。著者らは、より効率的に新しい標的や作用機序をスクリーニングする方法の開発を試みました。
著者らはまずリガンド-タンパク質相互作用を検出するため、リガンドによる熱安定化を利用したサーマルプロテオームプロファイリング(TPP)を採用しました。続いて標的タンパク質を直接発現・精製し、アフィニティー限外ろ過質量分析法(AUMS)によるスクリーニングを行い、1対1、特異的な、タンパク質-リガンド相互作用を確認しました。
手法の有効性をテストするため、著者らは細胞溶解液をヘンプオイル抽出物(HOE)並びにコントロールとしてDMSOと混合し、様々な温度でインキュベートしました。その後タンパク質をトリプシン処理し、TMT剤で標識して混合し、LC-MS/MSで分析しました。HOE処理前後の可溶性タンパク質含量の変化を比較したところ、タンパク質の熱安定性が全体的に向上していることがわかりました。HOE処理を行ったサンプルでは、16,351のペプチド、3,250のタンパク質(グループ)、2,725の定量解析に用いる事ができたタンパク質(グループ)が同定されました。
著者らはFold changeの値とp値から、タンパク質CDC123を良い標的として選択し、タンパク質を調製し、HOEと混合してインキュベートしました。限外濾過で結合したリガンド-タンパク質複合体と結合していない化合物を分離した後、複合体から放出されたリガンドをLC-MS/MSで同定しました。その結果、最も強い結合親和性を示すリガンドはカンナビジオール(Cannabidiol,CBD)であることが確認されました。
Mascotニューズレターで取り上げてほしい話題や研究論文がありましたらぜひご紹介ください。また、Mascotニューズレターの内容に関してお気づきの点やご質問などありましたらご連絡ください。
HUPO 2024が10月20日から24日まで、ドイツのドレスデンで開催されます。
ブース21番にぜひお越しください。Mascot Server 3.0の新機能のライブデモをご覧ください。ライセンスのアップグレードについてご興味がある方には、最適な方法をご案内いたします。
お立ち寄り頂くタイミングとしては、11:45-13:00、15:35-16:30のポスターセッション、および初日のウェルカム・レセプションが最適です。もし会議中の特定の時間にご面会を希望される場合は、お手数ですがEメールにてご連絡ください。
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