2025年4月号 (#125)

今月のお知らせは、6月2日にアメリカメリーランド州ボルチモアで開催されるASMS 2025のMatrix Scienceユーザーミーティングについてご紹介します。皆様ぜひご参加ください。また、ASMSでMascotを使用したポスター発表または講演をなされる方は、ポスター番号/講演番号、発表者名、要旨をnewsletter@matrixscience.comまでお送りください。今後のニュースレターでご紹介させていただきます。

今月の論文は、今月の論文は、長さ0のクロスリンク設定を使用して、GPIHBP1とリポタンパク質リパーゼ間の相互作用について調べた研究です。

今月のブログは、Thermo Orbitrap向けに最適なMS2PIPモデルの選択についてです。

Mascotニューズレターのバックナンバーはこのページ(英語版日本語版)からご覧いただけます。ご一読の上、ご意見・ご質問等ございましたら、お気軽にお問い合わせください。

Matrix Science ASMSユーザーミーティング

6月2日にメリーランド州ボルチモアで開催されるASMSユーザーミーティングにぜひご参加ください。

参加費は無料ですが事前登録が必要です。定員に達し次第締め切らせていただきますので、お早めにお申し込みください。朝食が提供されます。

Monday 2 June, 7:00 am – 8:00 am
Room 338, Baltimore Convention Center, Baltimore, MD

  • Using MS2Rescore to boost identification rates in complex samples,
    Tim Van Den Bossche, Computational Omics and Systems Biology Group (CompOmics), Ghent University/VIB-UGent Center for Medical Biotechnology

  • Mascot DIA: Universal spectrum-centric approach,
    Ville Koskinen, Matrix Science

  • Mascot DIA: Thermo LFQ example,
    Patrick Emery, Matrix Science

Register now

ヘパラン硫酸からのリポタンパクリパーゼの競合による置換は、GPIHBP1中の無秩序な酸性クラスターによって制御されている

Competitive displacement of lipoprotein lipase from heparan sulfate is orchestrated by a disordered acidic cluster in GPIHBP1

Anamika Biswas, Samina Arshid, Kristian Kølby Kristensen, Thomas J.D. Jørgensen, Michael Ploug

Journal of Lipid Research, 66(2):100745, 2025

トリグリセリドに富むリポタンパク質(TRLs)と、そのコレステロールを多く含むレムナント粒子の血しょう中濃度の上昇は、急性膵炎や動脈硬化性心血管疾患のリスクと関係がある事が示唆されています。TRLs の迅速な代謝には、活性型リポタンパクリパーゼ(LPL)の代謝の流れが厳密に調節されていることが必要です。この間質中のLPLの輸送は、血管内皮に存在する必須の輸送受容体である GPIHBP1 によって行われます。

著者らは、GPIHBP1 が LPL をヘパラン硫酸プロテオグリカンから引き離す分子機構を明らかにしました。その解析には、示差走査蛍光定量法、リパーゼ活性アッセイ、水素-重水素置換質量分析(HDX-MS)に加え、ゼロ距離クロスリンク法を用いて、GPIHBP1の酸性尾部とヒトLPL(hLPL)との相互作用領域の実験的マッピングを行いました。

ヒトGPIHBP1の組換え体および分泌型を、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)を用いてhLPLとクロスリンクしました。その後SDS-PAGE によって分離し、切り出したクロスリンクタンパク質を消化、18O 標識し、LC-MS/MS で解析しました。得られたrawデータは Mascot Distiller で処理し、クロスリンクされたペプチドは Mascot Server を用いて同定しました。可変修飾として、メチオニン酸化、ピログルタミン酸、チロシン硫酸化のほか、18O標識サンプルでは C末端の 18O標識を加えました。

解析の結果、Mascotスコアが80以上の信頼性基準でGPIHBP1 の酸性尾部と hLPL の間に 16〜22 種類のユニークなクロスリンクを同定しました。これらは C末端への 18O 標識の取り込み増加でも検証しています。GPIHBP1 の酸性残基は、LPLのC末端ドメインとN末端ドメインの境界付近にマッピングされ、両ドメインにわたる広範な多電荷相互作用が存在することが明らかになりました。

Mascotニューズレターで取り上げてほしい話題や研究論文がありましたらぜひご紹介ください。また、Mascotニューズレターの内容に関してお気づきの点やご質問などありましたらご連絡ください。

Thermo Orbitrap 向け MS2PIP モデルの最適化

Illustration for Mascot

Mascot Server は、Thermo Orbitrap 装置での定性分析およびラベルフリー定量分析用に、CID、HCD2019/HCD2021、Immuno-HCD という 3 つの MS2PIP モデルを搭載しています。MS2PIPを有効にすると、配列情報から同定されたペプチドのMS/MSスペクトルを予測し、測定値と予測値の相関関係を利用することで、正しい同定を強化すると同時に誤った同定にペナルティを与えることができます。この仕組みにより偽陽性率を抑え、同定ペプチドの数を改善することができます。

CIDモデルは、その名称が示すようにリニアイオントラップおよびインソースCIDに最適です。一方HCD2021モデルはHCDに最適です。Immuno-HCDは免疫ペプチドに対するモデルです。このモデルはHLA-IおよびHLA-IIペプチドを対象としていますが、トリプシン消化物であっても優れた性能を発揮します。詳細はブログ記事(英語版日本語版)をご覧ください。Mascot Server 2.7、2.8、3.0での結果比較も含まれています。

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